To Be a Good Company

モビリティ変革
"MaaS"のインフラとなるために

PROJECT STORY #2

PROFILE

営業企画部 マーケティング室
グローバルマーケティンググループ
課長代理

清水 慈 Shigeru Shimizu

2013年入社。大手金融機関担当の営業部門に配属。その後、内閣官房にて自動運転政策等の立案・遂行に携わる。
現在は営業企画部グローバルマーケティンググループにてMaaS・次世代自動車のプロジェクトを担当。

社会的課題を解決する"MaaS"のインフラへ。
自らイノベーションを起こす時代の到来。

出発地から目的地までに利用する電車やバスなど、全ての交通機関をひとつのサービスとして統合し、決済まで統合する"MaaS" (mobility as a service)。 次世代の交通や都市計画の在り方として大きな期待が集まる同事業に、大手からベンチャーまで様々な企業が熱視線を送っている。その中で東京海上日動は、MaaSから派生する新たなビジネスを支えるインフラとして存在感を強めている。未知なる風を読み、プロジェクトを力強くリードする清水にその展望を聞いた。

モビリティの変革であるMaaSは、取り組むべき必然のテーマ

地域の高齢化や公共交通の廃線、都心部の渋滞、人手不足。日本の交通が抱える様々な社会課題を解決する手段として、MaaSが脚光を浴びている。「保険会社として何ができるかを模索し、お客様の抱える問題にどうアプローチできるか、どんな新しい価値を生み出せるかを考えるやりがいのあるプロジェクトです。」そう語るのは、MaaSにおける新たなソリューションを生み出し東京海上日動を牽引する清水だ。これまでに内閣官房へ2年間出向し、国の自動運転の方針やロードマップ作成を経験、幅広い知見を身につけた。この4月からは次世代モビリティに関連する社内の動きを統括する営業企画部・グローバルマーケティンググループに身を置く。

「長年、東京海上日動の収益源となってきたのは自動車保険です。自動運転やシェアリングなど、いわゆる『CASE』と呼ばれる自動車の次世代化が進む中で、今後も的確なサービスを提供していくためには、時代を先回りして見ていく必要があります。自動車に限らずあらゆるモビリティの変革であるMaaSは、私たちが取り組むべき必然のテーマでした。」と清水は語る。

すでに2019年から、東京海上日動が確保すべきマーケットや将来必要とされるサービスの把握、全国の営業拠点も巻き込んだ社内の適切な体制づくりなどのプロジェクトを開始している。

創業から140年の長い歴史
実績が生んだデータと知見をMaaSへ展開

東京海上日動のMaaS領域における取り組みは多岐に渡る。例えば、CASEやMaaSの進展が保険商品や販売チャネル等に与える影響の分析や、その時代に必要とされる保険商品や損害サービスの開発を、新たなテクノロジーを取り込みつつ検討・実行している。MaaS向けの保険としては、MaaSユーザーの出発地から目的地までのリスクを包括的に補償するシームレスな保険や、MaaS事業者の新しいビジネスリスクを補償する保険開発などの準備が進んでいる。また新たな取り組みとして、保険会社が保有するビッグデータを活用した、多様な事業者とのアライアンスによるMaaSビジネスモデル創造にも踏み出している。

「長年にわたる保険ビジネスで蓄積したデータは、例えば事故が多発するエリアや、危険走行の多い箇所などの判別を可能にし、リスク面のコンサルティングに役立てられます。万が一の事故補償だけでなく、事故を未然に防ぐための方策やシステム、安心安全を備えた新しいビジネスの創出につなげていきたいと考えています。保険商品の提供のみに留まらない、一気通貫の発想でMaaSのこれからを支え、普及までをサポートするようなビジネスモデルを実現したい。」清水は今後の時代に沿った、新しい東京海上日動の在り方を思い描いている。

保険の周辺サービスもMaaSの重要なピースとなる大きな可能性をもっている。東京海上日動は2019年7月に訪日外国人向け周遊パスなどに組み合わせる海外旅行保険の付帯サービスとして、治療費用を自己負担することなく受診できる医療機関の紹介や災害情報の提供などのサービスを付加した、訪日外国人向け総合サポートサービスをリリースした。

「実はインバウンドの課題のひとつが医療。外国人旅行者が現金を持っておらず、医療費を支払わないまま帰国してしまうケースもあります。このサービスによりキャッシュレス対応の病院や多言語通訳の案内も可能となり、エリア内を周遊する際の安心安全の提供と社会課題の解決につながる第一歩が踏み出されました。インバウンドは今後も成長が見込まれている分野です。自治体や事業者の方々に本サービスについてお話しすると、保険金をお支払するだけではない、損害保険の意外な可能性に驚かれることも少なくありません。全国どこの拠点にいる社員でも、MaaSにおける損害保険の可能性をアピールできる。そんな取組を先導するのも、私の重要なミッションです。」

多様なプレーヤーをつなぎ、課題解決と社会の最適化へ

現在、全国各地でMaaSに関わる実証実験が行われており、事業者と自治体の連携が加速している。東京海上日動も全国各地で事業者や自治体と協業・ビジネスモデル開発に関わるプロジェクトを進めている。事業者を巻き込んだ今後の展開に期待を寄せる清水だが、その一方で課題を感じている部分もある。

「交通や都市計画の課題はそれぞれの地域によって異なります。例えば都心は混雑緩和や利便性向上が課題ですが、地方では赤字路線や人手不足などが深刻な問題となっています。観光地ではスムーズな周遊性と決済、人気スポットなどの情報提供などが重要となりますが、そうした課題の違いを考慮してサービスを創出していく必要があります。たとえ革新的なサービスでも、それが社会課題の解決につながっていなければ本末転倒なのです。難しいですが、答えやニーズは現地にあり、訪問するたび新たな発見ができる面白さも実感しています。」

サービスの創出が目的ではなく、あくまで社会的課題の解決が清水の目指すゴールだ。課題のあるところにしか、イノベーションは生まれないからこそ、それをどれだけ把握しているかがこれからの時代を切り拓くカギとなる。大企業、地域を支える企業、スタートアップ、地方自治体、あらゆるプレーヤーと保険を通じてアライアンスを組める東京海上日動は、多様な視点でそれぞれが抱える課題を把握し、様々な社会課題を解決するMaaSのインフラを目指す。それは、保険会社自らがイノベーションを起こす時代の到来を告げている。

※仕事内容および所属部署は取材当時のものとなります。