To Be a Good Company

"必然"の海外事業戦略
未知の地アフリカへ

PROJECT STORY #1

PROFILE

東京海上ホールディングス
海外事業企画部 欧米・再保グループ マネージャー

中井 良一 Ryoichi Nakai

1997年入社。国内でパーソナル営業部門およびディーラー営業部門を経験後、ニューヨークで米国保険規制の調査を担当。その後、ジュネーブにあるシンクタンクへの出向を経てロンドンでは欧州および国際保険規制を調査。帰国後は経営企画部、業務企画部で金融庁や経済団体等を担当し、現在は東京海上ホールディングス海外事業企画部で主にアフリカ事業を指揮している。

アフリカの地に安全・安心をお届けすること。
大いなる使命に向けた、新たな挑戦が始まった。

アフリカサハラ砂漠以南のサブサハラ地域は、2050年までに人口が約22億人と世界の4分の1を占めるまでに増加すると見込まれている。
この地で事業を展開するHollard(ホラード)社に出資し、新たな市場開拓を目論む東京海上グループ。保険未開拓地で、どんな挑戦が待ち受けているのか。プロジェクトをリードする海外事業企画部マネージャーの中井が、その行方と社会的意義について語った。

アフリカ、サブサハラ地域の大きな成長力を見つめて

54カ国(国連加盟国)で構成されるアフリカ大陸は、北アフリカとサハラ砂漠以南のサブサハラ地域に大別される。サブサハラ地域は、2050年までに人口が大幅に増加し、世界の4分の1を占めると見込まれており、GDPも現在の4倍の規模になると予想されている。この地で事業を展開するのがHollard社。南アフリカを中心にサブサハラ地域で確かな地位を築いている保険会社だ。同社に出資した狙いと背景とはどのようなものだろうか。

「東京海上グループは、海外保険事業の規模および収益の拡大をグループ全体の成長ドライバーと位置付け、内部成長の強化と戦略的なM&Aの両輪で、グローバルな成長機会と分散の効いた事業ポートフォリオを追求しています。すなわち、私たち保険会社にとって、グローバル展開を推進することはある意味必然であり、今後も着実かつ戦略的な拡大を見据えています。こうして日本での自然災害の脅威をグループ全体としてカバーし、安定した経営基盤を築いてきた結果、今やグループ全体の利益のおよそ半分が海外保険事業で占められています。しかし現状、海外保険事業での新興国の割合はまだ約1割です。今後、中長期的に高い成長が見込まれるアフリカ大陸、とくにサブサハラ地域は重要なマーケットと捉えています。」と中井は話す。

人口が爆発的に増えているにも関わらず、保険の普及率は先進国対比でまだ低く、有望なマーケットとして見据えていた。しかし、アフリカは様々な社会課題を抱え単独で進出することが容易ではない地域である。そこで、同地域において確かな実績をもつHollard社をパートナーとして迎えた。

数々のメリットと意義をもつアフリカでの第一歩

Hollard社は1980年に創業され、2020年にちょうど40周年を迎える。現在では南アフリカおよびその周辺国を中心に事業を展開しており、南アフリカでは、損保業界2位、生保業界で6位、さらに南アフリカの周辺国にも6カ国に進出しており、ボツワナでは損保事業で1位、ナミビアで2位、モザンビークで4位の地位を確立している。各国に進出して15年前後で業界トップクラスのポジションを獲得しており、アフリカ大陸で揺るぎない実績を有している。

市場の将来性を見据えて、アフリカに進出する日系企業は年を追うごとに増えている。今回の出資提携により、東京海上グループはアフリカ全54カ国の殆どの国で保険の引受が可能となった。不安定な社会情勢や精神衛生面での課題、金融制度の不安など、様々な課題を抱えながらも大きな成長が期待できるアフリカ。その地で挑戦を続ける日系企業を根底から支えることができるのだ。

"Hollard Purpose"と"To Be a Good Company"
共通の理念で結ばれたパートナーシップ

「現在は、Hollard社へ駐在員を派遣し、現地における戦略企画部門のヘッドとして同社の成長戦略の推進、再保険、アンダーライティング(保険引受の可否判断や一連の業務)、デジタル推進など幅広い分野における東京海上グループとのシナジー発揮に向けた取り組みを推進しています。また、出資後に当社とHollard社の主要経営陣および株主で構成される合同戦略会議を定期的に開催し、Hollard社の事業課題や戦略等に関する幅広い議論を展開しており、当社の専門知識・技術やキャパシティを最大限に活かす形で、事業の発展・拡大を目指しています。」

アフリカという未知の土地で事業を展開するためには、Hollard社の南アフリカ周辺国に対する知見と経験は欠かせない。しかし、それ以上に大切なのは、両社の親和性である。中井は両社の理念の類似点を強調する。

「Hollard社は、"Hollard Purpose"という企業理念を掲げ、企業の社会的意義の追求やポジティブな社会変化への貢献を原点に置いた継続性の高い企業価値観・文化を有しています。これは、当社の企業理念である"To Be a Good Company"と非常に近いものがあり、一緒に事業を行うパートナーとしてベストであると考えています。」 また先日、Hollard社とのパートナーシップ開始後の両社間の強固な信頼関係を象徴するような出来事があった。

「南アフリカでは、アパルトヘイト終息後に黒人の地位回復を目的とした数々の制度があります。その中で黒人の経済的地位向上に向けた企業の取り組みや貢献度を複数の要素からスコア化して、政府機関や公共事業体との取引の条件等とする制度があります。このスコアの高い格付けが、南アフリカで事業を行う企業として社会的責任を果たすという観点から、同地でビジネスを行う上で非常に重要な要素となっています。Hollard社は元々8段階の基準のうちレベル4の認定を受けていましたが、先日2段階上のレベル2に格上げとなりました。当社の駐在員は、Hollard社の中でこの取り組みを推進したチームで主導的な役割を果たしており、両社間の強固な信頼関係の構築に大きく貢献しました。」

保険がまだ社会に定着していないアフリカに安心・安全をお届けすること。その大いなる使命に向けて新たな航路を走りはじめた。行く手に待ち受ける数々の困難を、志を一つにするパートナーと共に乗り越えていく。その原動力となるのは、社会をより良いものにしたいという情熱である。

※仕事内容および所属部署は取材当時のものとなります。