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STORY

海を拓き、日本の未来を灯す。
――洋上風力発電、エネルギー変革に
挑むリスクマネジメントの最前線

五十嵐 茉莉
船舶海洋・航空宇宙本部
船舶海洋部 海洋開発チーム
マネージャー
五十嵐 茉莉
篠崎 現
船舶海洋・航空宇宙本部
船舶海洋部 海洋開発チーム
篠崎 現
森 里咲
船舶海洋・航空宇宙本部
船舶海洋部 海洋開発チーム
森 里咲
海を拓き、日本の未来を灯す。――洋上風力発電、エネルギー変革に挑むリスクマネジメントの最前線
日本の再生可能エネルギーの切り札、洋上風力発電
現在の日本はエネルギー供給の多くを輸入化石燃料に依存しており、エネルギー自給率の低さが国家的な課題となっている。脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギー技術のさらなる導入が急務となる中、いま「洋上風力発電」に大きな注目が集まっている。
四方を海に囲まれた日本にとって、洋上は陸上よりも大規模な開発が可能であり、広大なポテンシャルを秘めている。数万点に及ぶ部品で構成されるこの事業は、関連産業への経済波及効果や地域活性化への寄与も大きく、まさに「日本の主力電源化に向けた切り札」といえる。
しかし、その巨大な可能性の裏には、巨額の投資と未知のリスクが潜む。100年以上の歴史を持つ海上保険のプロであり、リスクの専門家である東京海上日動は、この難事業の完遂に向けて多くの関係者と伴走を続けている。100年以上の歴史を持つ海上保険、そしてリスクマネジメントのプロフェッショナルである東京海上日動は、洋上風力発電の導入に向けて、多くの関係者と日々伴走する。
きっかけは1つの事故のニュースだった
見えないリスクを先回りし、一丸となり挑む。
きっかけは1つの事故のニュースだった
洋上風力発電プロジェクトにおいて、東京海上日動はプロジェクトの検討フェーズからプロジェクトのリスクマネジメントや保険設計へ深く関与する。保険のプロとしての知識はもちろん、100を超える国内外の洋上風力発電プロジェクトの引受実績と経験を活かして、プロジェクトのパートナーとしての取り巻くリスクへの対応が求められるためだ。
「洋上風力発電の先進地である欧州と比べると、日本は地震、津波、台風、落雷といった自然災害が頻繁に起こる過酷な地域と言えます。事業者としても、それらに対応した技術を導入しなければならないですし、メンテナンス規格も検討する必要があります。巨大なリスクを伴うプロジェクトの裏にある保険がないことにはプロジェクト自体が進行せず、出資元である銀行からの融資も行われません。そのため、関係先と話し合いながら適切なリスク分析を行い、日本独自の環境に適合する保険を設計することも必須な役割の一つです。」(篠崎)
「洋上風力発電に関する事例が日本国内ではかなり少なく、何かリスクが生じたときにどう対応するかという答えが簡単に見つかるものではありませんでした。国内外の関係者から情報をヒアリングしながら常に情報をアップデートしました。お客様とともに、『何が最適なのか』を考え抜くプロセスは、まさに日本の洋上風力発電を創り上げているという実感がありましたね。」(森)
「保険と一言にいっても様々なものが存在します。今回のケースだと、建設工事の保険や、風力発電設備の操業中に起こりうる大きなリスクをカバーする保険、船舶を用いて設備の建設や修繕を行うので船舶保険や貨物保険といったあらゆる保険の知識が必要になってきます。個人としてはもちろん、東京海上日動としての組織力も欠かせません。」(五十嵐)
日本国内で事例の少ない洋上風力発電プロジェクトの推進には、グループ会社である東京海上ディーアール(TdR)も参画し、東京海上グループ一丸の体制を構築した。
「TdRはリスクエンジニアリング(事故や災害のリスクを分析・評価し、被害を最小限に抑える)に強みを持っています。技術的な分析やリスクの定量評価いついては彼らの知見を借り、東京海上日動内の船舶保険や建設工事保険のプロとも密に連携しながら、組織の総力を挙げてプロジェクトに取り組んでいます。」(五十嵐)
リスク分散が鍵。
ロンドンを舞台とした国際交渉。
洋上風力発電は、プロジェクトあたりの費用は数千億円規模に達する。長期かつ安定的に保険を提供するためには、引き受けたリスクの一部を他の保険会社へ分散する「再保険」が極めて重要な戦略となる。保険業界の中心地であるロンドンで、新規プロジェクトの保険調達に向けて、国際保険マーケット関係者との交渉に臨んだ。
「自社だけでは数千億円のプロジェクトを抱えきれないため、万が一の巨額事故が経営に致命的な影響を及ぼさないよう、リスクを適切に分散していく必要があります。ロンドンでは、担当案件の概要やリスク特性を論理的に説明し、理解を得るための交渉を行いました。」(五十嵐)
きっかけは1つの事故のニュースだった
海外出張は年に数回、時には1日に5,6社と打ち合わせを行うこともあったという。海外のブローカーや再保険者、ロスアジャスター、弁護士などの国際マーケット関係者とコミュニケーションをとる際に五十嵐が大切にしていることは、「プロ」として認められることだと語る。
「グローバルなトレンドをキャッチアップした上で、自分なりの意見を持ち、相手とディスカッションすることを日々心がけています。東京海上日動というリーディングカンパニーであるからこそ経験できた専門性もありますが、一番大切なのは、お客様が我々に相談してよかったという『安心』を提供することだと考えています。」(五十嵐)
その真摯なアプローチは、再保険調達にあたってのパートナーであるMcGill and Partners社からも高く評価されている。
「現在の市場環境において、日本のプロジェクトは非常に魅力的だ。東京海上日動のリーダーシップと専門性はロンドンでも広く認知されており、彼らの慎重かつ論理的な手法からは学ぶことが多い。」(McGill and Partners社 担当者)
プロジェクトを共にするJ-POWER 電源開発株式会社の担当者も、東京海上日動の存在感に信頼を寄せる。
きっかけは1つの事故のニュースだった
「ロンドンで強く印象に残ったのは、東京海上日動の皆さまのプレゼンスの高さです。一見の事業者では接点を持つことが難しい再保険者の方々とも、非常にフランクなコミュニケーションを取られており、長年にわたる信頼関係があってこそ実現している関係性であると感じました。会社としてだけでなく、チームメンバー一人ひとりがプロフェッショナルとして関係性を築かれている様子が印象的で、パートナーとして非常に心強く、力強い存在であると改めて感じました。」(J-POWER 電源開発株式会社 担当者)
現場へ足を運び、
未知のリスクに寄り添う。
商業ベースでの大型洋上風力発電が日本で初めて生まれた場所、秋田県。秋田港・能代港で洋上風力事業を展開する秋田洋上風力発電株式会社(AOW)の現場は、常に未知への挑戦と隣り合わせだ。
「初めてこの場所を訪れた時は、海上に基礎の黄色い部分だけが出来上がっている状態でした。それが今、巨大な風車が整列し、ダイナミックに回っている。図面や施工計画で見ていたものが目の前で具現化されている姿を見て、本当に幸せな仕事に関わっているなと、担当冥利に尽きる思いでした」(五十嵐)
きっかけは1つの事故のニュースだった
五十嵐が現場を重視するのには確固たる理由がある。
「現場に足を運んで、プロジェクトのことを誰よりも深く理解すること。そして、社会が前に進んでいくために自分たち保険会社に何ができるのかを考え抜くこと。それが私たちの提供価値だからです」(五十嵐)
海外拠点が持つ先行事例を共有するだけでなく、自らが現場に入り込み、事業者が直面しているリアルな課題を肌で知る。
「有事の際に心強いご相談ができるのはもちろんですが、何もない『インシデントのない操業』をいかに継続していくか、お互いに切磋琢磨できる関係性が築けています」(AOW 担当者)
きっかけは1つの事故のニュースだった
こうした事業者との二人三脚の歩みは、現在進行中の新たな巨大プロジェクトへもしっかりと引き継がれていく。五十嵐は今後の展望についてこう力を込めた。
「まさに今手掛けている新規プロジェクトの風車21基も、この奥の海に建設される予定です。洋上風力という日本の新しい挑戦を後押しし、クリーンな電力を安全に安定して届ける。未来につながっていくこの景色を、いつか自分の家族にも見せたいですね」(五十嵐)
かつては「厄介者」と敬遠されることもあった秋田の海風。それをサステナブルな未来を照らすエネルギー資源へと変えるAOWの挑戦。その傍らには、日本の新しい産業を共に創り上げるため、現場で並走し続ける東京海上日動の姿があった。
"Beyond insurance"
―― 保険の先にある、
より良い世界へ。
数百名の国際保険関係者が集まるカンファレンスにおいて、東京海上日動はこれからの姿勢を明確に示した。そのキーワードが、"Beyond insurance"(保険を、超えて)だ
「”Beyond insurance”というキーワードでプレゼンをさせていただきました。保険の引き受けは第一の領域ですが、それだけに留まらない。保険+αの価値を提供し、お客様の挑戦を共に支え抜く存在でありたいと考えています。」(五十嵐)
「我々の役割は、既存の枠組みにお客様を当てはめることではなく、ゼロベースでお客様のリスクに対応し、真の課題解決をお客様と共に導き出していくことです。そういった意味でも”Beyond insurance”は我々のこれからを指し示す旗印になると思います。」(篠崎)
きっかけは1つの事故のニュースだった
改めて本プロジェクトに携わったメンバーに自らの使命、そして今後の展望について語ってもらった。
「目の前のお客様の挑戦に我々も取り組むことで、それが社会の課題解決につながり、自分の子ども、さらにその先の世代にとってより良い世界につながっていくことだと思っています。今後更に新しい技術を用いた洋上風力発電プロジェクトや大規模な海底直流送電といった海洋開発プロジェクトが日本で進んでいきます。そういったプロジェクトの実現に向けて、より深い関与も進めています」(五十嵐)
「今、我々のチームが携わっていることは、日本のエネルギー政策のど真ん中の仕事です。プロフェッショナルとして我々が切り開ける領域をしっかりと支え、日本が目指す道に少しでも近づけるように支援する。これが私にとっての使命です。」(篠崎)
「今回のプロジェクトが、世界における日本の洋上風力のイメージアップにつながると思っており、洋上風力産業全体が、プロジェクトから国、そして世界へとプラスの方向に広がっていけば良いと思っています。」(森)
海を切り拓き、エネルギーの未来を創る。東京海上日動の挑戦は、これからも続く。
それぞれの使命
※仕事内容、所属部署、職種は取材当時のものとなります。