仕事の現場
「リーディングカンパニー」に息づく
“パイオニア精神”が業界初の商品を
創造する
原田秀美
サービス部門
1998年入社
<取材当時の内容です>
「ちょいのり保険」は携帯電話やスマートフォンから、一日500円の保険料で加入できる業界初の一日型自動車保険です。私はプロジェクトリーダーとして、商品開発部門と営業推進部門を兼務しながらこの保険の開発に携わり、関係者が数百人を超える大規模プロジェクトのとりまとめにあたってきました。
「ちょいのり保険」は、これまでの保険の常識を変えた画期的な商品。というのも、この保険が開発されるまで、自動車保険は車を対象にかけるのが当然。人を対象にした保険は、損保業界のどこを探してもありませんでした。しかし、考えてみれば、交通インフラの発達した都市部で、車を所有せずに必要な時だけ借りる人や、若者が親や友人の車を運転するケースは日常茶飯事です。これまでの自動車保険はそういったニーズに応えられていません。それは年間10万件以上と推定される無保険運転による事故(※)の要因ともなっています。無保険運転による事故は深刻な社会問題のひとつ。「ちょいのり保険」はこうした社会問題にも応える、全く新しい保険なのです。
(※)保険に加入していない車両による交通事故のこと。事故の加害者の賠償資力次第では、深刻な事故にも関わらず被害者が十分な補償が受けられないという問題がある。
もともとこの商品の誕生は、「若者の車離れ」に対応した商品アイデアを社内で募ったことがきっかけでした。その中にあった「気軽に入れる保険がいいのでは?」という意見に惹かれた私は、メンバーとともに調査を開始することにしました。大学でヒアリングを行うと、「友だちの運転を代わりたいが、無保険ではできない」「家族旅行で親の車を運転したかったが、無保険なので止められた」などの声が、多数集まりました。同時に、若者の経済事情からすると負担感のあるこれまでの自動車保険が、若者の車離れや無保険事故に無関係でないことを思い知らされました。そこで、「いつでもどこでも入れる低価格の保険」を企画。新商品開発のプロジェクトリーダーに抜擢されたのです。
通常、新商品の開発といえば数百人の関係者を巻き込むものであり、プロジェクトリーダーは、企画・市場調査・システム開発・プロセス設計・商品認可申請・プロモーションの検討・代理店向け勉強会など、全開発工程での検討項目に判断を下していきます。当然、困難の連続なのですが、とりわけ、この「ちょいのり保険」開発プロジェクトの難易度は非常に高いものでした。この保険は、従来の概念を覆して補償対象が'人'であるということ、かつ、お客様が'手続きしやすい'スピーディな契約プロセスを確立しなければならないことがコンセプト。それだけに、独自の開発アイデアが求められるプロジェクトとなりました。
最大の壁は、「運転するときにすぐに入れる」をどう実現するかでした。これを可能にしたのは、かつてない契約プロセスの開発でした。これまで、自動車保険は補償内容が複雑なため、紙の申込書もしくはパソコンの画面を通じて、複数の多岐に亘る必要項目をご確認いただくのが一般的でした。しかし、こうした既存の契約プロセスの延長線上では新商品のコンセプトが実現できず、プロジェクトは暗礁に乗り上げかけました。その突破口を開いたのが「携帯電話による申込手続きの完結」というアイデアでした。世の中にない新しいビジネスモデルが現実化する予感に身震いがしたのを覚えています。ただしその道のりは平坦ではなく、アイデアを実現するためには、新商品開発の社会的意義を関係者一人ひとりに丁寧に説明し、共感を得るというプロセスを避けて通ることはできません。また、保険の申込書をご覧になったことのある方はおわかりになるかと思いますが、特に自動車保険はご契約の際に多数の必要事項をご申告いただく必要があります。データの通信速度や通信量に加え、画面の大きさにも制限のある携帯電話を通じて、お客様にいつでもスムーズにお手続きいただけるようにするためには、いくつもの技術的課題を乗り越える必要がありました。この点についても、商品開発にかける想いに共感いただいた大手通信会社と包括提携契約を結び、技術面での共同開発を進められるようになったことで、課題を克服し、最終的に携帯電話から「自動車保険」に加入できる画期的な仕組みの構築に漕ぎ着けました。
東京海上日動は、今から100年前に日本初の自動車保険を開発した会社です。その先人のパイオニア精神は私たち後を継ぐ社員に脈々と受け継がれ、その後も、自動車の普及と事故の急増に対するサービス体制の構築や新商品の開発につながっています。例えば、私が入社した1998年は奇しくも自動車保険が自由化された年でした。社内には「お客様のためになる従来にない商品」を開発しようという機運がみなぎっており、新人だった私は、先輩方が徹底してお客様目線にこだわった、当時としては画期的な商品を完成させる様子をみていました。
それから十数年を経て「ちょいのり保険」が誕生するのですが、これを可能にしたのは、先輩たちが歴史の中で積み重ねてきたより良い「商品・サービス」をいち早くお客様に届けるという使命を自分たちも引き継いでいかなければという責任感、そして商品開発のプロとしての誇りだと思います。保険は国内では飽和状態という声もありますが、社会の変化や技術革新に伴い、保険のニーズも刻々と変化しています。お客様の「安心と安全」を守る新たな商品・サービスを開発し、提供していくことが、社会を支える重要なインフラ産業に携わる我々の使命。今後もパイオニア精神を胸に、次代の「人と社会に貢献する新たな商品・サービスの開発」に邁進していきたいと思います。
日本初の自動車保険を開発したパイオニア精神を受け継ぎ、業界初の一日自動車保険「ちょいのり保険」を開発。
商品開発を通じて、若者に気軽かつ「安全・安心」に車を運転する楽しさを提供するとともに、年間10万件以上と推定される無保険事故の削減をめざす。
これからも時代の要請に応える新商品・サービスをお客様に届け、リーディングカンパニーとしての使命を果たしたいと考える。